「金曜日の夜はお暇ですか?」
私の目をのぞきこみながら尋ねてきたのは、あるカフェのスタッフの女の子だ。予想もしていなかった質問に一瞬言葉に詰まっていると、彼女がニッコリ笑ってこう言った。
「お客さん、Wi-Fiのパスワードがお知りになりたいんでしょ。パスワードは『are you free Friday night』です」
スタッフのほうは、思わせぶりにパスワードを告げて、客がどういう反応をするのか、楽しんでいるのだろう。印象に残るパスワードなので、この話をすると「ああ、あの店に行ったんですね」と分かるくらい有名だった。同じ店では「you are so hot!」がパスワードだった時期もある。残念ながら既に閉店してしまったが。
「khong co Wifi」というパスワード。意味は「Wi-Fiはありません」である。「そうか、Wi-Fiはないんだ」と諦めようとしたら、店員さんが「あ、それがWi-Fiのパスワードですから」と言い添えてくれた。
こういう「ビックリさせる系」のパスワードはいろんなバリエーションがある。例えば「em khong biet」=「知りません」。これに似たものでは「password la gi」。意味は「パスワードは何ですか?」だ。店員さんに「パスワードは何ですか?」と尋ねて「パスワードは何ですか?」と逆に質問されると、一瞬、戸惑う。「Wifi hu roi」=「Wi-Fiは壊れました」というパスワードにもいたずら心が感じられる。
「ムッとさせる系」のパスワードとしては「why don't you use 3g?」がある。これは「(Wi-Fiではなく)3Gを使ったらいかがですか?」の意味だから、スタッフの言い方によってはムッとするだろう。私の知り合いがあるところで、Wi-Fiのパスワードを尋ねたら「hoi lam gi」=「何のために聞くの?」で、これにもやはりイラッとしたそうだ。
「ほのぼの系」のパスワードもある。私がよく行くカフェの1つのパスワードは「thank you」だ。パスワードが「I love Vietnam」という店もあった。「I love you」というパスワードもある。店員と客が共に若い男女なら照れてしまうかもしれない。