サイゴン路地裏物語
働きながらダブルスクール
働きながらダブルスクール
今年25歳になるデザイナーのハーさんは勉強熱心だ。
出社前に英語学校に行き、退社後には専門学校でデザインソフトの使い方を学んでいる。彼女が働いているのは外資系企業で社内では英語が必要なのと、将来、親戚が移住したオーストラリアで働きたいからだという。デザインソフトは、もちろん自分のスキルアップのためだ。給料の4割近くが授業料に消えるという。
「両親と一緒に暮らしているから、それでも大丈夫なのよ。というか、学校に行きたいから、一人暮らしを諦めたとも言えるわね」
彼氏はいない。「恋愛は仕事で一人前になってから。そうしないと彼氏ができても結婚できないでしょ」という。
ベトナムの共働き率は高い。少し古い統計になるが、日本総研「2015年度アジア主要都市コンシューマインサイト比較調査」によると、ベトナム都市部の共働き率は98%を超えているという。
ハーさんは「稼ぎがない女の子は、嫁の貰い手がいないわ。素敵な結婚をするためにも、キャリアを磨かなきゃ」と笑う。
その真偽はともかくとして、私の周囲のベトナム人は男女を問わず、会社員をしながら学校に通う人が多い。夜間の大学で別の学位を取ろうとしている人、資格取得のための専門学校に通う人など、その内容は様々だが、目的が「知的好奇心」ではなく「キャリアアップ=昇給のため」という点は共通だ。
ベトナム人は仕事より家庭を大切にする。残業や休日出勤は基本的にご法度だ。一方で「少しでもいい暮らしをしたい」という強い上昇志向も持っている。ハーさんのように「働きながらダブルスクール」という人は増えていくのではないだろうか。
写真:路地裏のカフェでバンミー(ベトナム風バゲットサンド)とコーヒー。下町の典型的な朝食風景の一つだ。今はコロナのため、このような情景は見られなくなっているが。
(本稿初出:2021年10月11日)
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