サイゴン路地裏物語

ベトナム・ホーチミン市の路地裏に住む日本人が見た素顔のベトナム人。

サイゴン路地裏物語

気が利くホテルスタッフ

気が利くホテルスタッフ

気が利くホテルスタッフ

私は焦っていた。取材が予定より大幅に長引いたからだ。ホーチミン市からハノイへの出張最終日。夕方6時のフライトでホーチミン市に戻ることになっていた。この調子だと、取材が終わるのは午後4時頃だろう。通常であれば問題ない。ホテルはチェックアウトを済ませており、荷物も持っている。

しかし、困ったことが1つあった。タブレット端末が出張中に壊れ、なじみの店に修理に出していた。修理は正午には終わっており、取材の後にお店で受け取り、空港に向かうつもりだった。

取材先からお店までは約30分。そこから空港までは約1時間かかり、飛行機に乗り遅れる恐れがあった。

数週間後には、再びハノイ出張が入っている。ホテルに電話をし、「次の出張まで、私のタブレットを預かってもらえないでしょうか」とお願いした。

電話で応対してくれたのは、ベトナム人女性のフロントスタッフのフーンさん。2泊するうちに私の名前を覚え、いつも笑顔であいさつしてくれた。泊まっていたのは日系のビジネスホテルで、接客スタッフは全員、基本的に日本語を話す。フーンさんも、かなり日本語が上手だった。

「タブレットは今、お店にあるのですね。それはどうされますか?」
「お店に電話して、ホテルに届けてもらおうと思っています」
「了解しました。このまま少々お待ちください」

こんなやりとりの後、彼女がベトナム語で何かを話しているのが、かすかに聞こえた。ほどなくして、フーンさんからこう提案された。

「今、確認したところ、手の空いているスタッフが1人います。彼が今からお店に行ってお客様のタブレットを受け取り、取材先にお届けします。それでいかがでしょうか?」

一瞬、言葉に詰まった。とても助かるのは事実だが、そこまでお願いして良いものだろうか。逡巡(しゅんじゅん)したが、結局、フーンさんのありがたい申し出に甘えることにした。

次のハノイ出張時に、ホテルのフロントを訪れるとフーンさんがいた。前回のお礼を伝えた後、「1人の宿泊客のためにあそこまで手間をかけることを、よく上司が許してくれましたね」と聞いてみた。

「いいえ、上司には確認をとっていません。私の判断で手配しました」という返事がきて、驚かされた。フーンさんは大学を出たばかり。このホテルで働き始めて間がないと言っていたからである。

「え? それで問題にはならなかったのですか?」とたずねると、「このホテルに就職したときに、日本人の社長から『常にお客様の利益を最優先に考えて行動しなさい』と言われたのです」と教えてくれた。

想定外の出来事が起きたときは、この基本原則を思い出し、自分で考え、判断する。急ぎの場合、上司への確認は後回しにしても構わない。あなたに判断ミスがあっても、責めることはない。社長はこう伝えたそうだ。

フーンさんは、「お客様のケースは、明らかに急ぎで、上司に相談していたら、間に合わなくなる可能性がありました。それで独断で動いたのです」と話し、一段落した後に上司にメールで報告したと説明してくれた。

うれしそうな表情を浮かべ、「とても、ほめてもらえましたよ」と言う彼女を見ながら、ベトナム人のホテルスタッフが生き生きと働いている理由の1つが分かった気がした。

【写真キャプション】
ベトナムの日系ビジネスホテルには、このように露天風呂を備えているところが多い。

(初出:時事速報ベトナム版2021年05月28日/改稿:2021年09月27日)

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家族一緒が一番幸せ(2021-12-27 06:00)

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