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サイゴン路地裏物語 2021/09/27 気が利くホテルスタッフ 気が利くホテルスタッフ 私は焦っていた。取材が予定より大幅に長引いたからだ。ホーチミン市からハノイへの出張最終日。夕方6時のフライトでホーチミン市に戻ることになっていた。この調子だと、取材が終わるのは午後4時頃だろう。通常であれば問題ない。ホテルはチェックアウトを済ませており、荷物も持っている。 しかし、困ったことが1つあった。タブレット端末が出張中に壊れ、なじみの店に修理に出していた。修理は正午には終わっており、取材の後にお店で受け取り、空港に向かうつもりだった。 取材先からお店までは約30分。そこから空港までは約1時間かかり、飛行機に乗り遅れる恐れがあった。 数週間後には、再びハノイ出張が入っている。ホテルに電話をし、「次の出張まで、私のタブレットを預かってもらえないでしょうか」とお願いした。 電話で応対してくれたのは、ベトナム人女性のフロントスタッフのフーンさん。2泊するうちに私の名前を覚え、いつも笑顔であいさつしてくれた。泊まっていたのは日系のビジネスホテルで、接客スタッフは全員、基本的に日本語を話す。フーンさんも、かなり日本語が上手だった。 「タブレットは今、お店にあるのですね。それはどうされますか?」 「お店に電話して、ホテルに届けてもらおうと思っています」 「了解しました。このまま少々お待ちください」 こんなやりとりの後、彼女がベトナム語で何かを話しているのが、かすかに聞こえた。ほどなくして、フーンさんからこう提案された。 「今、確認したところ、手の空いているスタッフが1人います。彼が今からお店に行ってお客様のタブレットを受け取り、取材先にお届けします。それでいかがでしょうか?」 一瞬、言葉に詰まった。とても助かるのは事実だが、そこまでお願いして良いものだろうか。逡巡(しゅんじゅん)したが、結局、フーンさんのありがたい申し出に甘えることにした。 次のハノイ出張時に、ホテルのフロントを訪れるとフーンさんがいた。前回のお礼を伝えた後、「1人の宿泊客のためにあそこまで手間をかけることを、よく上司が許してくれましたね」と聞いてみた。 「いいえ、上司には確認をとっていません。私の判断で手配しました」という返事がきて、驚かされた。フーンさんは大学を出たばかり。このホテルで働き始めて間がないと言っていたからである。 「え? それで問題にはならなかったのですか?」とたずねると、「このホテルに就職したときに、日本人の社長から『常にお客様の利益を最優先に考えて行動しなさい』と言われたのです」と教えてくれた。 想定外の出来事が起きたときは、この基本原則を思い出し、自分で考え、判断する。急ぎの場合、上司への確認は後回しにしても構わない。あなたに判断ミスがあっても、責めることはない。社長はこう伝えたそうだ。 フーンさんは、「お客様のケースは、明らかに急ぎで、上司に相談していたら、間に合わなくなる可能性がありました。それで独断で動いたのです」と話し、一段落した後に上司にメールで報告したと説明してくれた。 うれしそうな表情を浮かべ、「とても、ほめてもらえましたよ」と言う彼女を見ながら、ベトナム人のホテルスタッフが生き生きと働いている理由の1つが分かった気がした。 【写真キャプション】 ベトナムの日系ビジネスホテルには、このように露天風呂を備えているところが多い。 (初出:時事速報ベトナム版2021年05月28日/改稿:2021年09月27日) コメント(0)
サイゴン路地裏物語 2021/09/20 返って来た500ドル 返って来た500ドル 「500ドル、貸していただけないでしょうか」。友人のベトナム人女性トゥーさんからこう切り出され、近藤さんは一瞬言葉に詰まった。 近藤さんがダナンに出張したとき、たまたま飛行機で隣同士になったのがトゥーさんと知り合ったきっかけだ。年が20歳以上も離れている上、近藤さんには奥さんと子供がおり、トゥーさんにも婚約者がいる。恋愛感情が入り込む余地はないが、何となく気が合い、時折カフェでおしゃべりする関係が続いている。 そんなある日、「ちょっと頼みごとがある」と彼女に誘われ、カフェに出向いた。そこで出てきたのが、お金の相談だった。 トゥーさんは、「親友のお母さんが難病を患っています。手術すれば治る可能性が大きいそうですが、彼女にはそれだけのお金がなく、『お金を貸してくれないか』と私に頼みに来たのです」と説明した。 大学を卒業して間もないトゥーさんの給料は200ドル少々。ビンズオン省の親元を離れて、ホーチミン市で一人暮らしする彼女にとって生活するだけで精一杯だ。そこで思い浮かんだのが近藤さんへのお願いだったらしい。 近藤さんにとって、もちろん出せない金額ではない。しかし「親が病気」というのは、お金を借りるときによく使われる口実の一つ。 「返って来ない可能性が大きいだろうな」。そう思ったが、数日後、近藤さんは白い封筒に入れた500ドルをトゥーさんに手渡した。「何となく賭けてみる気になった」のだという。 その後、数カ月、トゥーさんから連絡はなかった。「やはりだまされたのかな」と近藤さんが思い始めたころ、彼女から電話が入った。 「友達のお母さんは無事に手術を受けられ、日常生活に戻ることができたのです」。そう告げる彼女の声は弾んでいた。 「私の友達は、近藤さんに会って直接お礼を言ってお金を返したいと言っています。あなたの連絡先を教えてもいいでしょうか」。彼女からこう言われ、連絡先を伝えたが、友達からは何の音沙汰もなかった。 さらに約3カ月がすぎたころ、トゥーさんから「近々、時間を取ってもらえませんか」と電話があった。友達から連絡がないことを話すべきか悩みながら、近藤さんは約束のカフェに出向いた。 「ごめんなさい」。約束の10分前にお店に着くとトゥーさんは既に来ていて、近藤さんの姿を見るなり、席から立ち上がって深々と頭を下げた。 「彼女がとっくにお金を返したと思っていのですが、先日会った時に『近藤さんにはまだ連絡していない』と言うのです。腹が立つと同時に、申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまいました」。普段はおっとりした話し方のトゥーさんが早口になり、語気も強くなっていた。 近藤さんは、「500ドルと言えば大金だし、返す気があっても、実際には大変ではないのかな」と相手のことをおもんぱかった。 トゥーさんは「それでも、一言、お礼は言うべきです」と言いながら、封筒を差し出した。「もう彼女のことを信用できないので、私がお金を返すことにします。ベトナム・ドンですけれど、500ドル分入っています。受け取ってください」と。 これは15年ほど前の話だ。その後も近藤さんとトゥーさんの不思議な友情は続く。トゥーさんの結婚式には、近藤さんも一家で招かれ、今や家族ぐるみの付き合いになった。 近藤さんは受け取ったお金を使わずに置いてある。「彼女の2人の娘が成人したときに、お祝いを贈るためです。その時に、このお金の由来も2人には話そうと思っている」と明かしてくれた。 【写真キャプション】 銀行の前に置かれた預金金利の看板。融資返済の利子も高いため、お金を借りるときは家族や友人を頼ることが多い。 (初出:時事速報ベトナム版2021年03月15日/改稿:2021年09月20日) コメント(0)
サイゴン路地裏物語 2021/09/13 私の命日 私の命日 「あなたの命日は2037年12月20日の日曜日だから」。 おごそかな表情で妻は私に告げた。結婚して間もない頃のことである。妻は私より9歳年下で、女性は男性より長生きすることが多い。「夫が死んだ後、自分は一人で何年くらい生きるのだろうか」と不安を感じ、占い師に相談したそうだ。この占いが当たれば、私は74歳でこの世を去る。 「忘れないように記録しておいて」と妻に促され、その日付をパソコンのカレンダーに登録した。以来約20年、折に触れて、自分の命日を見直している。妻も時折、「あなたが死んでから20年くらいは独り暮らしになるのだから、心構えをしておかないと」と話している。 ベトナムでは、法律で占いを禁止しているらしい。ただし、それは表向きの話だろう。実際には、占いやそれに類するものは社会で大きな存在感を持っている。中でも重要視されているのが風水だ。結婚式など重要な行事の日程を決めるとき、風水師に相談に行く人が多いという。 知り合いの会社で赤字決算が続いた際、ベトナム人の経営陣は緊急の取締役会を開き、対応を協議した。最初に決めたことは、「風水師を招く」だった。風水師の指示に従い、経理部の場所を変更し、会社の幹部全員が集まり祈りをささげた。 社員の日本人の中には、「経営の立て直しが風水頼みだなんて、この会社は危ないかもしれない」と、かえって不安を感じた人もいたようだ。 建築に関しても風水師の発言権は大きい。建築士としてベトナムで長く仕事するオーストラリア人の知人から興味深い話を聞いた。彼が手掛けた物件の一つに、ホーチミン市人民委員会庁舎と市民劇場に挟まれた超一等地に位置する商業施設・ユニオンスクエアがある。開業当時の名称はビンコムセンターA。 開業直後に会った時に、彼から「あのショッピングセンター、歩きにくいと思わないか?」と尋ねられた。「まるで迷路に入り込んだような気になることがある」と答えると、「それには理由があってね…」と、いきさつを説明してくれた。 建物は元々、ホテルとして設計されたという。市民劇場の下には地下鉄1号線の駅が設置される計画で、「地下鉄の駅から傘要らずで、チェックインできる交通の便の良さ」がホテルの売りの一つになるはずだった。建物の枠組みが完成し、内装工事に入った段階になって、風水師からオーナーに「ここにホテルを建設するのは風水的に良くない。ショッピングセンターにしなさい」という指示が入ったそうだ。 「ホテルとショッピングセンターでは動線が全く違う。でも、もう階段や内壁はできているので、大幅な変更はできない。無理矢理ショッピングセンターにしたので、ああいう状態になってしまった」と、彼は嘆いた。 鳴り物入りで開業したものの、閑散とした状態が続き、オーナーは再び、風水師に相談した。その際、地下鉄の話が出たところ、「どうして、それを言わなかったのだ。地下鉄が通るのだったら、風水的にあの場所はホテルに最適だ」という言葉が返ってきたという。 その後、ユニオンスクエアは一時閉鎖され、同じ建物内にマンダリン・オリエンタル・サイゴン・ホテルが開業すると発表されたのは、2018年5月のこと。開業は20年中の予定だったが、工事はまだ続いている。 知り合いの日本人建築家からも同じような話を聞いた。彼は肯定的に考えようとしている。 「風水はベトナムの伝統。これを『ただの迷信』と切り捨てるのではなく、共存することが大切だと思う」。 【写真キャプション】 亡くなってから3日3晩が弔問期間で、都合のいい時間に訪ね、御霊前で手を合わせて帰る。服装はカジュアルでも構わない。 (初出:時事速報ベトナム版2020年12月11日/改稿:2021年09月13日) コメント(0)
サイゴン路地裏物語 2021/09/06 納骨堂で号泣する女性 納骨堂で号泣する女性 まさに「号泣」という言葉がぴったりだった。 教会の納骨堂には、壁一面に遺骨が入った小さな収納庫が並び、故人の遺影とともに生まれた日と亡くなった日が記されている。遺骨の収納庫の表面を手でなでながら、話かけたり、涙を流したりしている人を見掛けることは多い。 60代に見える女性が、その一つに頬を擦り寄せながら、辺りをはばかることなく、大声を上げて泣いていたのだ。とぎれとぎれに聞こえる彼女の言葉から、遺骨は何年か前に亡くなったご主人さんであることが分かった。 敬虔(けいけん)なカトリック信者だった義父も、その教会に遺骨が納められており、家族そろって定期的に訪れている。 くだんの女性はとても1人で歩けるような状態でなく、迎えに来たお子さんらしい人に抱えられ、納骨堂を後にした。ベトナム人女性は夫への愛情が深いという話をよく聞く。それを目の当たりにした気がした。 深い愛情にはマイナスの側面もある。日本人の夫の勤める会社に、ベトナム人妻が半狂乱の状態で、「夫が行方不明です! すぐに探してください!」と電話をかけてきた。夫の日本人同僚が話を聞いたところ、「彼の携帯電話に連絡しているが、もう3時間も出ない。普段なら2時間に1回くらいは電話をくれるのに」との話だった。 結論を言えば、夫は重要な会議に出ていて、その間、携帯電話を切っていただけだった。妻は「浮気をしているのではないか」と怒ったり、「交通事故に遭ったのではないか」と心配したりと、気が気でなかったそうだ。 こんな話もある。ベトナム人の妻を持つ日本人が集まって食事していた時に、結婚間もない男性が先輩らに、「先日、飲み会で帰りが遅くなったところ、妻が怒って家に入れてくれず、途方に暮れた」と相談した。 先輩からは、「そういうことは珍しくない。ホテルに泊まれるように、パスポートは常に持ち歩いている」との返事だった。身分証明書となるパスポートを提示しないと、ホテルに泊まれないからだ。 驚いた表情を浮かべる新婚男性に、その場にいた10人近い日本人男性が全員、カバンからパスポートを取り出して見せた。私もその1人だった。ベトナム人の妻を持つ日本人が集まると、この手の笑い話は尽きることがない。 言うまでもなく、ベトナムの女性が皆、情に深いわけではないが、日本人女性の平均と比べると、その差は歴然としているように感じる。30年余り前に日本で流行した「亭主元気で留守がいい」というコマーシャルをどう思うか。ベトナム人の女性に聞いて回ったことがあるが、一様に「信じられない」という反応だった。 「情は深いが、拘束も強い」という夫婦関係を選ぶか、「淡交」を選ぶかは、それぞれの価値観の問題で、どちらが良いかは一概に言えない。 それでも私は、納骨堂で号泣する女性を見ながら「ここまで深い愛情を抱いてくれるのなら、厳しく夫を管理したり、嫉妬深くなったりしても、辛抱する価値があるのではないか」と感じた。 【写真キャプション】 教会の納骨堂。都市部を中心に火葬が行われるが、地方では土葬もまだ多い。 (初出:時事速報ベトナム版2020年11月27日/改稿:2021年09月06日) コメント(0)