サイゴン路地裏物語

ベトナム・ホーチミン市の路地裏に住む日本人が見た素顔のベトナム人。

サイゴン路地裏物語

カフェの卒業生

カフェの卒業生

カフェの卒業生

「『子供が高校生になりました』って、卒業生が家族おそろいで報告に来てくれたよ」。
ミーさんはこう言って、目を細めた。

彼は学校の先生ではない。ソンチャンというレストランを営んでいる。「卒業生」というのは、かつて彼が経営したカフェをデートで利用し、その後、結婚したカップルのことだ。

あるベトナム人から、「経験した恋の数だけカフェがある」という話を聞いた。ホーチミン市の若者のデートは、安い屋台でさっと食事を済ませ、その後、カフェで長居するパターンが多いという。同じ店に毎回通い、別れてしまうとそのカフェには立ち寄らない。新しい恋人ができると、別のカフェを選んで利用する。

結婚すると、独身時代ほどには頻繁にカフェでデートしなくなる。自宅でゆっくり話ができるからだろう。しかし、誕生日とか結婚記念日など特別な日には、かつて行きつけだったカフェに足が向く。結婚が決まると報告しに行ったり、子どもが生まれると見せに行ったりする人もいる。

どのくらい一般的かは分からないが、20数年前、わたしが妻と交際していた時も、食事の後に行くカフェはいつも同じだった。ミーさん夫妻の営むソンチャンである。英語に訳すとムーンリバーというロマンチックな響きだ。

市内のビンタイン区のタンダと呼ばれるエリアにあった。サイゴン川の中洲で、中央を貫く一本道の両側に川の見えるレストラン、カフェが立ち並ぶ。若者の支持が高く、恋人ができたら一緒に行きたいカフェが何軒かあり、私達の通ったソンチャンはトゥイチェと並ぶ人気店の1つだった。

小さな森のような庭園カフェで、川に向いた2人掛けの椅子が並ぶ。席と席は少し離れていて、隣の会話が邪魔にならない。明るさを抑えた間接照明で、背後に流れる音楽も控えめ目。飲み物を持ってきてもらったときに料金を払う。その後は2時間いても、3時間いても、文句を言われないし、こちらが声を掛けない限り、店員は席の近くに寄ってこない。

妻とソンチャンに通っていた頃、オーナーのミーさん夫妻と話す機会はなく、二人と知り合ったのは偶然だった。

結婚してベトナムに住み始めてから、取材で訪れたレストランがソンチャンという店名。オーナーに「実はこのすぐ近くにあった同じ名前のカフェに通っていた」と話した。するとうれしそうに自分を指差しながら、「それ、私の店です」と。

夫妻はカフェを閉め、近くに故郷クイニョンの郷土料理を味わってもらうレストランを出したのだという。調理を担当する奥さんも話に加わり、「あなたは私達のカフェの卒業生だから家族の一員だ」と盛り上がった。

それから15年以上にわたり、家族ぐるみの付き合いが続いている。ソンチャンは人気のカフェだっただけに、家族連れでお店に来る卒業生が多くいるそうだ。こういうカフェ文化は、ベトナム人の生活に潤いを与える要素の1つであるに違いない。

【写真キャプション】
ソンチャンの跡地にできたカフェ。雰囲気は引き継いでいる。

(初出:時事速報ベトナム版2020年10月26日/改稿:2021年08月30日)

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