サイゴン路地裏物語
日本という看板を背負っている

日本という看板を背負っている
先日、ビジネス関連の懇親会に参加した。会場のビルでエレベータに乗りこんだところで、少し先から急ぎ足でやってくる男性の姿が目に止まった。服装がカジュアルなホーチミン市ではちょっと珍しいスーツ姿だ。私は「開」ボタンを押して彼を待ち、入ってきたところで「こんにちは。何階ですか?」と声を掛けた。日本人かベトナム人か判断が付かなかったのでベトナム語である。
男性は目線を合わせないまま、あごを突き出すようにし、英語で「4階」と返してきた。私と同じ行き先だ。後ろに立っていた彼は4階に着きドアが開くや否や、私を押しのけるように先にエレベータから降り、懇親会場に入っていった。
そのときは気にならなかったのだが、考えてみるとちょっと横柄ではないかと思えてきた。行き先を伝えるときには「4階」と言うのと同時に「お願いします」と添えるのが礼儀だろう。さらに私が「4」のボタンを押したところで、「ありがとう」の一言も欲しいところだ。エレベーターを降りるのも入り口近くに立つ私が先で、奥の彼が後というのが順当だろう。
英語が苦手だったのかもしれないし、会社での心配事で頭がいっぱいだった可能性もある。懇親会の開始までにはまだ余裕があったが、「早く会場に入りたい」と急いでいたとも考えられる。しかし「私をベトナム人だと思ったからかな」と勘繰ってしまった。非常に礼儀正しい人が、ベトナム人には態度を豹変させ、横柄に振る舞う姿をたびたびも目にしてきたからだ。
私を含め大部分の日本人は、ベトナム人に対して優越感を感じているかもしれない。日本人は礼儀正しいから、それを表に出さない。しかし、ベトナム人たちは一緒に働く外国人をよく観察している。口先だけでベトナムのことを褒めても、すぐに見抜かれてしまう。
「私の会社の社長は『ベトナム料理はおいしい』と言うが、彼がベトナム料理を食べているのを見たことがない。『社交辞令』と受け取っている」「社内ではいつも『ベトナム大好き』と言う日本人が、日系の飲み屋でベトナムの悪口で盛り上がっているのを見て悲しかった」といった話を友人のベトナム人から聞くこともある。
経済発展の度合い、社会の成熟度などいろんな面での違いから、日本人の中に優越感を感じる人がいるのは確かだろう。だからと言ってベトナムそのものを見下していいわけではない。ベトナムで暮らす外国人としては、感謝の気持ちでベトナムの人々に接するべきではないだろうか。
ベトナムで働いている私達は「日本という看板を背負っている」ことを意識したいと思う。見知らぬ人に手を貸す日本人を見たベトナム人は、「日本の人は親切だ」と感じるだろう。一方で、ベトナム人に失礼な態度を取る日本人がいたら「日本の人は横柄だ」と思ってしまう。常に日本人として恥ずかしくない行動を心掛けたいと改めて感じた。
【写真キャプション】
財団法人・大阪産業局とベトナム商工会議所(VCCI)がホーチミン市で共催した日越企業の懇親会。
(初出:時事速報ベトナム版2020年2月18日/改稿:2020年12月07日)
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