サイゴン路地裏物語

ベトナム・ホーチミン市の路地裏に住む日本人が見た素顔のベトナム人。

サイゴン路地裏物語

お母さんはホームドクター

お母さんはホームドクター

お母さんはホームドクター

日本人男性・Dさんは、私と同じようにベトナム人の奥さん一家と同居している。Dさんが病気になったときのことだ。会社で加入してくれている海外旅行保険を使って外資系の病院に行き、薬をもらってきた。

ところが義理のお母さんに
「その薬は良くない。私が買って来た薬を飲みなさい」
と強い口調でたしなめられた。

Dさんが
「でも、お医者さんが処方してくれた薬だし」
としぶっていると、お母さんは怒り出してしまった。
「あなたは家族の言うことより、今日会ったばかりの、見ず知らずの他人の言うことに従うの?」
と言うのだ。

「でもその人は、ちゃんとしたお医者さんだよ」
「処方した薬が間違っていて、あなたの病気が治らなくても、お医者さんは何も困らないし、責任もとってくれません。看病をするのは家族です。だから家族の言うことが何より信頼できるの」
こういってたしなめられた。これはやや極端な例だとは思うが、実にベトナムらしさの現れたロジックだなと私は感じる。

この背景には日本とは異なる医療事情もある。ベトナムには医師資格を認定する国家試験がない。つまり医学部を卒業すると同時に医師として実務に入る。そのため医師のレベルには、かなり幅があると言っていいだろう。ベトナム市民もそれを知っているから、医師への信頼感は日本に比べて低い。

日本でも1人の医師のいうことを全面的に信じるのではなく、「セカンドオピニオン」をとることの重要性がよく指摘される。しかしベトナムでは、その比ではない。「自分が納得する診断をしてくれる医師が見つかるまで、病院を転々とする」という人すらいるほどだ。

そこには「医師と言っても専門家でははない。その診断が正しいかどうかを最終的に判断するのは本人の責任。診断が間違っていて命を落とすのは、医師ではなく本人なのだから」という「自己責任」の意識が強く働いているように感じる。

身近なところでは、私の義理の母も医師の診断をあまり信用していない。家族が病気になると、正しい薬を処方して買ってくるのは自分の責任だと任じている。薬局で買いたい薬のリストを出したのに「AとBの薬は同時に服用してはいけません」と売ってくれない場合は、どうするか。複数の薬局を回って自分が欲しい薬を買い揃えて、家族に服用させるのだ。

一度、義母の素人処方が原因で、私の娘、彼女にとっての孫娘の病状が悪化したことがあった。ホーチミン市内最大の病院に慌てて連れていき、現在、飲ませている薬を義母が医師に告げたところ、「あなたはお孫さんを殺すつもりか!」と厳しく叱責された。

しかし逆に、薬局で処方された薬では効かなかったのに、義母が自分のメモを見ながら組み合わせを考え、複数の薬局を回って買って来た薬で病状が改善することもあった。医師や薬剤師よりも、普段から家族の体調を見ている人間のほうが正しい判断ができることもあるのだろう。愛情という名の「資格」を持った「お母さんホームドクター」は強いのだ。

写真:ホーチミン市伝統医学病院の中に置かれたベトナム伝統医学の祖・Hai Thuong Lan Ong(Le Huu Trac)医師の胸像。

(本稿初出:2020年01月13日)

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