サイゴン路地裏物語
日本ファンのベトナム人を裏切らないために

日本ファンのベトナム人を裏切らないために
外資系のマーケティング会社に勤務するトゥイ・ハンさんは、大の日本びいきだ。
「私がまだ大学生だった15年前に買ったホンダのスーパーカブは今でも現役よ。1ヶ月くらい乗らないと、エンジンのかかりが悪くなるバイクもあるけど、日本製のバイクはまったく問題なく動くの」。
彼女はフエの出身で、大学卒業後、ホーチミンシティに引っ越してきた。ベトナムでは中古バイクでも程度の良いものなら、比較的高価で買い取ってくれる。引っ越し時にバイクを売って、ホーチミンシティに来てから、お金を上乗せして新しいバイクを買うという方法もあっただろうが、
「売ろうなんて考えなかったわ。愛着があるという以上に、全然、故障しないんだもの」
バイクだけではない。
「子供に英会話を学ばせようと、私が昔使っていた英語学習用のCDを物置から出してきたの。それと一緒に、学生の頃に買ったパナソニック製の携帯CDプレーヤーもしまってあったので電源を入れてみたら、10数年ぶりだというのに、今でも何の問題もなく使えるの! さすが日本製品ね」
「日本製品は確かに少し高いかもしれないけど、故障しないし、長年使えることを考えたら、ベトナム製品や中国製品よりも安い」
と彼女の身の回りには、どんどん日本製品が増えていった。彼女に感化されたのか、旦那さんも今や日本製品のファンだそうだ。
トゥイ・ハンさんご夫妻は、日本に行ったことはない。しかし、「こんな素晴らしい製品を作るのだから、日本という国も、そして日本の人達もきっと素晴らしいに違いない」と日本そのものにも好印象を持ってくれている。
こういう話を聞くと、私は「メイドインジャパン信仰」を作り上げた先達たちの努力に感謝の気持ちが湧いてくる。細部にわたるまで手を抜くことなく、丁寧にモノづくりをしてきた賜物だろう。日本製品の優位性をアピールするマーケティング戦略も大事だろうが、愚直な努力の積み重ねのほうが、深い信頼感を得られるような気がする。
最近の日越関係を見ていて、時に残念になるのは、こういう「日本」のブランドイメージを傷つける日本人がいることだ。雑な仕事をしたのは自分なのにうまく行かないとベトナム人に責任転嫁する現地で働く日本人、ベトナム人女性の買春体験をインターネット上で得意気に披露する男性、「上から目線」でベトナム人を見下した発言や行動をする人、こういう日本人が急激に増えているような気がしてならない。
もちろん、そういう日本人の姿をベトナムの人もしっかり見ている。「ベトナムが日本に比べたら、はるかに遅れている国であることは、よく分かっています。でも……」と口ごもる人だけではなく、「日本は素晴らしい国だと思っていましたが、日本人と接する機会が増えるにつれ、日本人に失望するようになりました」とはっきり言う人もいる。
信頼感を築き上げるのには時間がかかるが、それを崩すのは簡単にできてしまう。先人達が何十年もかけて作り上げた良い日本のイメージが、一部の日本人によってガラガラと崩れていくのを目の当たりにするのは、日本人の1人として辛いものがある。
ベトナムに住んでいる日本人の1人として私ができることは、自分自身がベトナムの人と誠実に付き合うことだろう。そういう気持ちを持って行動する人が増えることで、トゥイ・ハンさんのような日本ファンを失わないようにしたいものだと思う。
写真:ホーチミンシティでは、年代物のカブを多数見かける。
(本稿初出:2019年12月16日)
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