サイゴン路地裏物語

ベトナム・ホーチミン市の路地裏に住む日本人が見た素顔のベトナム人。

サイゴン路地裏物語

スーパーはレジャーランド

スーパーはレジャーランド

スーパーはレジャーランド

週末には近くのスーパーで1週間分の食材をまとめ買いする。よく行くのがゴーヴァップ区にあるEマートという韓国系の大型スーパーだ。開店したのはちょうど4年前で、以来、非常に賑わっている。ここにやってくるベトナム人客を観察するのはおもしろい。

まず1人で買い物に来る人はめったに見かけない。多いのが家族連れだ。お父さん、お母さん、子供が2人というのが標準的な構成だろう。そしてショッピングカートを2台使う。1台は買ったものを入れるため。もう1台は子供を載せるためである。

この店のカートは大きく、幼稚園児くらいの子供なら2人は乗れてしまう。折りたたみ式の台座がついていて、小さい子供を座らせると後ろ向きに足を出すことができる。つまりカートを押す親と座っている子供は、向き合って会話をしながら買い物ができるわけだ。持参した毛布と枕をカートの底に敷いて赤ちゃんを寝かしつけてから、店内に入っていく若い夫婦を見かけたこともある。

家族連れで来店する人が多いのは、ベトナムでも核家族化が進み、自宅に小さな子供たちだけを残しておけないという理由もあるのではないかと、私は推測している。しかしそれ以上に、ショッピングは娯楽なのだ。

それを感じるのは店内で記念撮影をしている人を見かけるときだ。今日、Eマートのスナック売り場で時間をかけて自撮りしている若い女性2人がいた。似たような情景はイオンスーパーでも見かける。大型のスーパーに行くのは、晴れがましいことなのだろう。

子供たちにとってスーパーは遊び場だ。持参したミニカーを床で走らせて遊んでいる男の子、座り込んで腕に抱えた人形に話しかけている女の子などを見かける。おそらく「買い物もできる遊園地」みたいな感覚なのだろう。売り場で遊ぶ子供がいるのはスーパーに限らない。我が家の近所にあるミニストップやファミリーマートでも、床に座り込んで遊んでいる子供たちの姿を見かけることは多い。

1つ1つの商品を選ぶのにかける時間は、日本より確実に長いだろう。ベトナムは品質管理が日本に比べて甘く、食材は注意深く選ぶ必要があるからだ。買い物客同士の情報交換もある。先日、私が鶏肉のコーナーで、2つの会社のもも肉を見比べていると、隣に来た中年の女性が「左側の会社がお勧めよ。値段は同じだけど、右側のものより美味しかったわ」と教えてくれた。

今日は精肉売り場で、話し合いをしながら品定めをしている若い夫婦がいた。棚に並んでいる100グラム1万7100ドン(約80円)の豚肉のパックを、1つ1つ手にとって仔細に検討している。重さはどれも200グラム前後で揃っていて加工した日付はすべて同だ。それでも「こっちのパックほうがいいよ」「いや、それよりはこっちが」と真剣そのものである。野菜売り場でも同様だ。山のように積まれたニンジンの中から10本ほどを選び出して買い物かごに入れ、そこから更に比較検討をして、最終的に1本だけ買っていった中年女性がいた。

買い物に時間がかかる理由は他にもある。お菓子のコーナーで商品をスマホで撮影している若い女性を見かけた。そしてSNSで自宅にいるらしい子供を呼び出し、「どれが欲しい? お母さんが、あなたの好きなのを買ってあげるから」と話しかけている。特売品のコーナーの前で、やはり写真を撮って「今日は洗剤が安いんだって。あなたも来たら?」と誘っている主婦らしい女性もいた。

売り場内で飲食をしている人たちが多いのも特徴だ。Eマートではレジの外ではなく、レジの内側に飲食コーナーがある。テーブルと椅子が並んでいて、買ったばかりのお惣菜をそこで食べることができるのだ。店内を歩きながら食べている人もいる。今日も若い男女が、片手には飲み物の入ったカップを持ち、ホットドッグを頬張りながら買い物をしていた。

販促活動をしているスタッフの数も日本のスーパーに比べて多いと思う。Eマートでは、少ない日でも10か所程度のスタンドが売り場内に設けられ、そこで試食をさせてくれる。お菓子、ハム、インスタントラーメンなど提供されているものは様々だ。我が家の娘が小さい頃、スーパーに行くと、試食だけでお腹がいっぱいになってしまったほどである。

ちょっと気になるのは、買い物をせずにずっとスマホを見ている人だ。私の見るところ男性が多い。今日も、比較的空いていたアイスクリームが入っている冷凍庫の前に、数名の男性が立ってスマホの画面を所在なげに眺めていた。実は私も似たような状況になることがある。それは妻と一緒に買い物に来る時だ。

私の買い物は1時間足らずで終わってしまうが、妻は早くても2時間以上かかる。自分自身の買い物が終わった後、私は食材の入ったカートを押しながら、妻の後ろをついて歩くのだが、ごった返している店内をカートを押して歩くのは気をつかう。そこで妻とは分かれて比較的空いているコーナーに避難し、そこで妻の買い物が終わるのを待つのだ。冷凍庫の前に立ってスマホを見ている男性たちも、私と同じような状況なのではないだろうか。

私が子供の頃、50年近く前の日本のスーパーマーケットは、今のベトナムのそれと共通するものがあったように記憶している。あくまでも私の推測だが、買い物以外の目的で来店する人がいなくなり、かつ、買い物客が1人で来店するようになったら、Eマートは今の3分の1くらいの混雑になるかもしれない。スーパーがレジャーランド化しているこの状態、いつまで続くのだろうか。興味深い。

写真:ゴーヴァップ区のEマート。「開業4周年記念」のセール期間中だったので、普段以上に混雑していた。

(本稿初出:2019年12月09日)

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