サイゴン路地裏物語

ベトナム・ホーチミン市の路地裏に住む日本人が見た素顔のベトナム人。

サイゴン路地裏物語

「私を雇ってくれませんか?」

「私を雇ってくれませんか?」

「私を雇ってくれませんか?」

ホーチミン市のタンソンニャット空港に着いた私は、少し身構えていた。今回の日本出張は荷物が重たく、超過料金を取られそうだったからだ。超過の対象になるかどうかは、係員の性格も関係していると私は考えている。1キロでもオーバーしているとダメを出す人もいれば、「次回は気をつけてくださいね」と見逃してくれる人もいる。

もちろん規則は規則なので、超過料金を請求されたからといってゴネるつもりはない。いかに超過料金なしで通過するかは、私にとっては一種のゲームのようなものなのだ。

チェックインカウンターを一瞥して、優しそうな雰囲気の係員を探した。私が選んだのは、左から2番目のカウンターにいるトゥイさんという女性だ。柔らかな目元が決め手だった。パスポートを差し出しながら「チャオエム!」と笑顔で挨拶をする。重量超過を大目に見てもらうためには、まずは相手に好印象を持ってもらうことから始まる。続いて「夜遅くまで、お仕事大変ですね」などと話しかけた。

「お客さん、ベトナムには何年? そう10年以上いらっしゃるのね」
彼女も話に乗ってきてくれた。よくある世間話を交わしている間にも、彼女は手を休めずに搭乗手続きをしている。秤の数字は、私の荷物が15キロオーバーであることを示していた。

彼女はその数字を見ながら質問をしてきた。
「お客さんの会社では、ベトナム人の社員は募集していますか?」
「そうだね」
「じゃあ、私を雇ってくれません?」
私は驚いた。両隣のカウンターにいるスタッフには丸聞こえだろう。しかしトゥイさんは気にする風もない。我々の会話が耳に入っているであろう同僚たちも平然としたものだ。

「ベトナム航空というと一流企業でしょう? それなのにどうして?」
「組織が大き過ぎて、仕事の手応えが今一つ感じられないんです。だからもう少し小さい企業のほうがいいんじゃないかなって」

既に搭乗手続きは終わっていたが、私の後ろに誰も並んでいないのをいいことに、彼女と少し話をした。最終的に、私がベトナムに帰国したら改めて会って話をすることにして、お互いの携帯電話番号を交換する。機内預けの荷物の重量超過はお咎めなしだった。それはそうだろう、私は「もしかしたら自分のボスになるかもしれない人物」なのだから。

到着した関西国際空港では、さらにちょっとした驚きが私を待っていた。手荷物受け取り所で自分のスーツケースが最初に出てきたのである。通常はビジネスクラスのお客さんの荷物が先に出て来て、その後でエコノミーという順番だ。

謎はすぐに解けた。私のスーツケースにはビジネスクラス用の「プライオリティ」(優先)と書かれたタグがつけられていたのである。トゥイさんの配慮に違いない。私は彼女の顔を思い浮かべながら「なかなかやるな」と苦笑していた。

自分の都合のために会社の規則をないがしろにするのは、ほめられたことではない。しかし、私はベトナム人のこういう押しの強いところが嫌いではない。これくらいの強引な自己主張があってもいいのではないかと思うのだ。

ともあれトゥイさんが気の利く女性であるのは間違いないようだ。私はベトナムに戻ったら、彼女に電話をしてみようという気になっていた。

写真:ベトジェットエアのチェックインカウンター。LCCなので重量超過に関してはベトナム航空以上に厳しい。

(本稿初出:2019年11月11日)

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