サイゴン路地裏物語

ベトナム・ホーチミン市の路地裏に住む日本人が見た素顔のベトナム人。

サイゴン路地裏物語

図々しいが恩義を忘れないベトナム人

図々しいが恩義を忘れないベトナム人

図々しいが恩義を忘れないベトナム人

知人のベトナム人・トアンさんは日本語教師だ。彼の勤務している日本語学校で新しいコースを開設することになった。彼から連絡があり「そういうわけで、日本人の日本語教師を紹介して欲しい」という。

「知り合いの日本人に声をかけてはみるけれど、紹介できるかどうか保証はできない」
私はこう回答した。にも関わらずである。それからトアンさんからは「まだ見つかりませんか」という催促の電話が、頻繁にかかってくるようになった。

「既に生徒の申し込みは始まっています。開講日までに先生が見つからなかったら、責任をとって中安さんが教えてくださいね」
こう言って「脅迫」するトアンさんの顔は笑っているが、目はかなり真剣だ。

「また自分の都合ばかり押し付けてきて……」と閉口しながらも、つい、手伝ってしまうのには理由がある。

10年以上前の話だ。ベトナム視察のコーディネータを探している日本企業を、トアンさんに紹介した。すると私に「日本人の友だちを紹介してください」に始まり、まるで彼の助手のように仕事を振ってくるのだ。「これ、トアンさんの仕事なんだから、自分でやってよ」とブツブツ文句を言いながらも手伝った。

その仕事が終わった後、彼がお礼をしてくることはなく、私は「喉元過ぎれば熱さを忘れる」で、彼もすっかり忘れているのだと思っていた。

それから1年くらい経った頃だっただろうか。私の仕事で、日本語の分かるベトナム人の助っ人が急遽必要になった。トアンさんに連絡すると快諾。その翌日から1週間、彼は、私の事務所に朝から晩まで詰めて手伝ってくれた。

最終日、私が彼に謝礼を払おうとすると、
「以前、日本企業が視察に来たとき、世話になったじゃないか。お礼だなんて水くさい」
と、頑として受け取ってくれないのだ。私は「トアンさんは、人の世話になったことを忘れているに違いない」と思っていたことを、心の中で恥じた。

その後も、トアンさんは私に平気で頼み事をしてくる。一方で、私も遠慮せずに彼を頼るようになった。

私が子どもの頃には、親や教師から「他人には迷惑をかけるな」「何かをしてもらったら、すぐにお礼をしなさい」と教えられた記憶がある。私の回りのベトナム人の多くは、トアンさんに代表されるように正反対だ。だからといって彼らが無礼で恩知らずなわけではない。むしろ恩義に厚い人が多いように私は感じている。

「他人に迷惑をかけない。それと同時に迷惑をかけられるのも嫌がる」日本人と、「他人に平気で迷惑をかける。その一方で、迷惑をかけられても気にしない」ベトナム人。どちらが良いか悪いかではなく、流儀が違うだけなのだ。

ベトナム流にすっかり慣れた今、私にとって、それは非常に居心地がいい。

(初出:読売新聞・国際版 2018年5月18日/改稿:2019年4月8日)

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