サイゴン路地裏物語
少子高齢化は三世代同居で乗り越える
少子高齢化は三世代同居で乗り越える
ヴィンさん、カンさんの一家は、ご夫婦に加え、奥さんのお母さん、2人のお子さんという合計5人の三世代同居である。共稼ぎだから、学校から帰って来た子どもたちの世話は、おばあちゃんの仕事だ。ご夫婦ともに帰宅が遅いので、夕食の用意もおばあちゃんに頼んでいる。三世代一緒の食事の場にお邪魔して、撮影させてもらった。
共稼ぎが一般的なベトナムでは、お手伝いさんを雇って、家事や子守をしてもらう人が多い。しかし最近はお手伝いさんも求人難で、いい人を見つけてもなかなか長続きしない。何より身内のほうが安心だ。
おばあちゃんの側の利点も大きい。まず子どもや孫が同居してくれると心強い。家事や孫たちの世話をすることで、生活に張り合いもできる。
我が家も共稼ぎなので、同居している義母にはかなり助けてもらっている。そもそも「義母が同居してくれる」という前提がなかったら、子どもを持つこと自体に、ためらいを感じただろう。
義母は75歳。まだまだ元気だが、私たち夫婦が同居を始めた15年前に比べると衰えは隠せない。5年くらい前からはパーキンソン病が出てきた。ここ数年は物忘れが激しい。料理を電子レンジで温めたはいいが、それを忘れて、別の料理を作り始めるというようなことは日常茶飯事だ。
12歳になる私の娘は、自分の祖母のそんな状態を自然に受け入れている。私にとって、これは三世代同居生活の大きな利点の1つだ。「どんなに元気だった人も、歳をとると衰えていく」という当たり前だが冷酷な現実を、娘は学ぶだろう。そして街で困っているお年寄りを見かけたら、自分自身の祖母のことを思い出しながら、手を差し伸べる習慣が身につくのではないかと期待している。
我々としても、同じ家の中にいると、義母が病気になったときなどの対応がしやすい。
三世代同居に不便を感じることもある。みんなが何かを少しずつ我慢することが求められるからだ。しかしデメリットよりも、得られるメリットのほうが遥かに大きいと、私は実感している。
ベトナムでも核家族化が進んでいるが、日本に比べて、まだ三世代同居が多いだろう。そしてこれが、ベトナム社会を支えている柱の1つのような気さえするのだ。
日本も「三世代同居」というライフスタイルを、もう一度、取り入れてはどうだろう。そうすることで、老人介護や少子化の問題が改善されるというのは、あまりに楽観的過ぎる考えだろうか。
(初出:読売新聞・国際版 2017年12月22日/改稿:2019年3月11日。年齢は初出当時のママ)
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